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下肢運動器疾患患者と医師、研究者間の信用できる歩行データ流通システム(株式会社ORPHE)

2023/07/07ユースケース
下肢運動器疾患患者と医師、研究者間の信用できる歩行データ流通システム(株式会社ORPHE)

2022年度「Trusted Web の実現に向けたユースケース実証事業」において実証を行ったユースケースのうち、株式会社ORPHEの行った「下肢運動器疾患患者と医師、研究者間の信用できる歩行データ流通システム」の内容をご紹介します。

ページ下部の各資料リンクから、より詳細な実証内容についてご覧いただけます。

背景

 株式会社 ORPHE(以下、当社)は歩容解析(歩行速度、歩幅、着地角度、着地衝撃といった様々な歩行の特徴値の解析)を可能とする靴型のウェアラブルインタフェース(以下:スマートフットウェア)の研究開発を行なっており、近年はスマートフットウェアを変形性膝関節症(以下:膝OA)などの下肢運動器疾患のアセスメント(患者の症状や機能レベルを評価し、適切な治療計画を立てるためのプロセス)に応用する研究を行なっている。また医療現場での活用を進めるため一般医療機器(医療機器クラス1)に当たる歩行分析計と対応アプリケーションの開発を進めている(図 1.1-1、図 1.1- 2)。

図 1.1-1 ORPHE FOOTWEAR EASYRUN SHIBUYA 3.0 (ソール部にORPHE COREセンサーを内蔵可能)



図 1.1-2 ORPHE CORE MEDICAL (歩行分析計として第三種医療機器製造販売業許可を持つ提携企業が独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)に医療機器製造販売届書を申請済)


 膝OAは国内で自覚症状のある人だけでも1,000万人以上という非常に多い疾患の一つで、歩行が妨げられるため患者の運動能力やQOLに大きな影響を与える(図1.1-3)。膝の痛みを恐れて外出することが怖くなり、結果として筋力低下を招き転倒率を上げてしまうといった悪循環は非常に多くみられる。この様な状況を回避するため、筋力低下の前の段階からセンサーデータとアプリケーションを活用し、自分のデータとこれまでに蓄積された他の人のデータに基づいて適切な歩行動作や適切な歩数をAIが提案することで症状が改善することができれば、多くの人の健康寿命を伸ばすことに直結すると考えられる。

図 1.1-3 国内における膝OAの現状

 下肢運動器疾患のアセスメントにおいて歩行分析は重要で、例えば人工膝関節置換術(膝OAの治療法の1つ)では,8割以上の医療機関において歩行分析を含むリハビリプロトコルが設定されている。一方で現状の臨床現場では目視による定性的な動作分析が多く行われており、ストップウォッチを使ったタイム計測や動画撮影が主に行われていて、歩行についての詳細な分析がデータとして蓄積されていない現状がある。これまでも歩行分析計に区分される医療機器は販売されているものの、多くが80万円以上など高価であることと、時間が限られるリハビリの現場で使いやすく設計されてないといった問題があり日常的な臨床の現場で用いられている件数は少なかった。この様な背景から患者の歩行データを蓄積する意義は感じられていても、臨床の現場で効率的に蓄積する手段がなかったと言える。また医療従事者、患者療法へのヒアリングから、患者の日常生活における実際の歩行については臨床現場から効率的にアクセスする手段がないことが窺われた。
 また一方で、データを取得できたとしても、個人情報保護の観点からそのデータを第三者に共有し活用することは難しいという現状がある。当社はこれまでの研究開発の中で様々な研究機関、臨床機関と相談しデータを取得し解析することを行なってきたが、事前に研究目的を設定し、同意を取ってデータを取得し、別の研究目的が発生した際には同様に再度データの取得を行わなければならない研究手法には非常に時間と工数がかかっている。もし患者の日常生活におけるデータ、臨床における診察のデータなどが患者のダイナミックな同意(患者が状況や目的に応じていつでも同意の変更や取り消しができる形の同意)に基づいて活用可能であれば、世界中の歩行研究が一気に加速すると考えられる。

目的

この様な背景から、下肢運動器疾患を患う患者の日常的な歩行データ等の生体データとアンケート等の主観的な記録データを、ウェアラブルセンサーとスマートフォンアプリを用いて記録可能とし、データの拠出に紐づけてポイントを発行するシステムの必要性を感じた。またそのデータを医師や研究者、製薬会社が患者の承認を得た上で活用可能とするシステムの構築を行うことで、歩行研究や歩行に関する治療法の開発を加速するとともに、データ提供者にインセンティブを与えるための費用を拠出することができると考えた。

課題とTrusted Webによって解決する内容



検証を行うデータ

  • 患者は、データ共有先(医師、研究機関等)が信頼できる対象かを確認するために、データ共有先から発行されたリレーションVCの署名検証を行う
  • 蓄積される生体データが本人のものであることを確認するために、データの記録時に本人確認またはセンサデータによる認証を行う(将来的に実装)
  • 歩行計測データや主観的痛みなど本人の入力データが改竄されていないことを証明するため分散ストレージ(Private Data lake IPFS)にハッシュを記録する

主な成果

主な成果

  • アプリの実装と数名の下肢運動器疾患患者による試用実証実験を通じて、システムの実現性や需要を確認
  • ユーザの属性の証明、患者データの無改竄証明については実装が進んだ
  • 本事業は靴のセンサーデータに依拠しており、実際に靴を履いた人物が患者本人なのかということの証明については将来的に実装すべき課題である。この実現するためにはセンサデータの歩容認証など追加的な解析手法を取ることが必要であると判明


ユースケースに関連する資料

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